布と向き合うということ

作り手が自然と真摯に向き合い、素材を頂いて人の手をもって糸となし、

自然布を織り上げるように

使い手として、布と真摯に向き合いたいと思っております。

 

古い着物を手に取り、解き・繕いながら感じることは、

昔の人がどれだけ布や素材、実際に着る人の事を理解し、先のことを考えながら布を扱っていたかということ。

長年日常着としての着物を着ておりますが、まったく敵わないと思ってしまいます。

 

縫い方一つ取ってみても、一見ごく粗い縫い方のように見えて全く過不足がない。

素材の事を非常によく理解していて、それを最小限の手数でまかなってしまう。

日常の用を足すためなのに、それだけではない何かがあります。

 

写真はある日の、私の半日仕事。

大麻布を四点解きましたが、左の女物の縞着物には真赤なモスリンの衿裏が当てられ、

肩当には格子柄の綿縮、衿肩の継ぎに藍染無地木綿が使われていました。

 

年代は大正・昭和初年といったところ、自家用に作られたものでしょうが、

心尽くしのおしゃれと愛おしさに胸を打たれます。

 

こうした、モノを通して先人の美意識に触れることは、時代資料を扱う醍醐味ですね。

そんな小さな気づきを大切に毎日を過ごしていきたいと思っております。