重要無形文化財・椎葉神楽 装束復元のご報告

昨年夏から準備を進めておりました、宮崎県東臼杵郡椎葉村の椎葉神楽の装束復元が完成し

春祭りに合わせて無事にご奉納することが出来ました

 

今回復元したのは古枝尾集落に伝わる大麻布製の神楽上衣。

長年の使用による痛みが激しく、このまま使い続けるのは難しい状況でした。

そこでご有志の方から反物をご提供いただき、新たに二点新調するというものです

 

まず制作にあたって古い資料をお借りしての調査と、

新調にあたっての方針を地域の代表の方と打ち合わせを行いました

 

形態模写ではなくて可能な限り古式に準じた「復元」とすることを確認、

基本的にそのままの寸法で仕立てることになりました。

ただ後世の補修などで変更がなされたと思われるものは当初の姿に戻し、

また先方からご要望があった着丈のみ約10cm程長く仕立てました

(痛みにより着丈を切り詰めたとものと思われます)

 

反物は青森の民俗学者であられる故田中忠三郎さま旧蔵の大麻布反物を奥様よりご提供頂きました。

生前に私個人ともご縁があり、こうして形を変えて現地の方に役立てることが出来たことを

非常に嬉しく思っています

 

縫い糸は元資料と同じ麻糸で縫うことに。

新たに麻糸を準備することも考えましたが、古い生地に新しい麻糸で縫うと長期の使用に差し障る

可能性が出てくるため、反物の端を解いて縫い糸を確保しました。

 

また袖と背縫いの脇に紺の飾り糸があるため、こちらのみ新しい麻糸を準備しました。

その飾り糸の制作には宵衣堂も加盟する倭文の会にご協力を頂き、糸績みは柳町さん、

藍染は代表の奥野さん(紺邑さまにて)のもとでの制作。

 

通常の織物用より太めに仕上げて頂き、藍染は天然の藍のみを使った正藍染ということに拘りました。

また縫製に関しても戦前の仕立てを熟知する職人さんの意見を踏まえた上での制作です。

 

なお経ち方を工夫し、補修用の布や麻糸も準備することが出来ました。

今後の長きに渡って使い続けることが出来ることでしょう。

 

今回の復元は、椎葉村に撮影に通っていた吉岡監督から相談を受けたことが始まりました。

椎葉村では糸作りや織物の伝統は絶えてしまいましたが、こうして多くの方のご協力の上で形となり、

これから次の100年使われ続けることに、非常に強い意義を感じております。

 

全て自給出来るのであればそれに越したことはありませんが、こうして伝世した反物を使い、

現地の方にとって本当に必要なものを作ることは、古いモノを現代に生かすことなのだと思います。

そういった宵衣堂の活動が文化の伝承の一助となることを願ってやみません