青森県の特徴的な刺し子として「津軽こぎん」と「南部菱刺し」の2つがあり、
前者は西の弘前を中心に、後者は東の八戸を中心に、それぞれ別の技法として発達してしてきました。
共に大麻布に綿糸を刺すという特徴がありますが、それぞれの生業や風土に裏打ちされた存在です。
古くから北前船の交易で栄えた日本海側と違い、太平洋側はより貧しかったと言います。
南部の菱刺しの生地は浅葱色、対してこぎんの生地は黒に近い濃紺。
藍染でこの色を出すには、何度も重ね染めをせねばならず、
比較的裕福だった日本海側の津軽だから出来たという指摘があります。
また南部は畑作が中心だったため、モンペ状の下衣や前ダレ(前掛け)に
刺し子を施すという他にはない特長があります。
一方、こぎんにも地域性があり、弘前を中心として、”東こぎん”、”西こぎん”、北の”三嶋こぎん”の
三地域にそれぞれ文様や構成が異なります。
本資料は西こぎんで、肩の横縞と菱形の幾何学模様が特長で、
これも轡(くつわ)や生活に不可欠な身の回りの文物がモチーフとなった文様です
その布が伝統的に作り・使われてきたのにはきちんと意味があり、一種の合理性があったのではないでしょうか?
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