秋田県岩城町亀田周辺で昭和30年台まで作られていたという「白鳥織」
文字通り白鳥の羽毛を木綿に織り込んだもので、当時かなりの贅沢品であったといいます。
この織物には、ダウンの「羽毛」、軸付きの「羽根」の二種類があり、前者のほうがより軽く、
防水・保温性も非常に高かったとのこと。本資料は前者の羽毛を木綿に混ぜて、横糸に使われています。
また、そのルーツをたどると先人の叡智が透けて見えてきます。東北地方の山がちの地域では
木綿栽培も難しく、また現金収入に乏しいため衣服を購入するのも容易ではありませんでした。
鳥海山に抱かれた山形・秋田の周辺では、秋の山菜取りが重要な生業として行われており、
ゼンマイに付いている”ゼンマイ綿”が自然と集まります。
ただこのままでは繊維が短すぎて糸にはならない、そこで貴重な木綿に混ぜて
”かさ増し”すれば少ない量で布を織ることが出来る。
そうして作られた「ぜんまい織」の派生として、この白鳥織が成立したと言われています。
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深みのある黒の中に白い羽が、まるでグラデーションのように浮かび上がります。
木綿と羽毛という異素材の組み合わせは、世界的に見ても類例のない織物でしょう。
最初から織りの効果を狙って羽を混ぜたのではなく、モノがない状況で如何に家族の衣服をまかなうか
というギリギリの制約の上に成立したというルーツがあるのです。
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