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【 資料紹介 裂織仕事着 】

裂織がさかんに作られた、新潟県佐渡ヶ島に伝わる作業着。

経に麻糸、緯糸に裂いた木綿を強く打ち込んで織るため、目の詰んだ非常に丈夫で、暖かい織物になります。

 

過酷な労働が強いられる山仕事、または風をもろに受ける海仕事の人々にとっても、

厳しい自然環境から身を守るため、不可欠な衣服であったといいます。

 

 

裂織が盛んに作られたのは、日本海側を含む主に東北地方。

ではその原材料となる古手の木綿を、どこから手に入れていたかご存知でしょうか?

 

実は多くは京都・大阪などの上方地方の古着木綿が、北前船によって大量に東北地方に持ち込まれており、

当地の人々は、使えるものそのまま着用し、傷みのあるものはボロや裂織の原料にしたといいます。

 

木綿栽培が難しかった当地において、入手出来るものは古着に限られ、

それらを用いた衣服の再生産が広く行われておりました

衣服が消耗品となってしまった現代では、それらを実感する事が至難の業となってしまいました

 

 

本資料は、襟元に補強のための刺し子、袖口には松皮菱の意匠が施されています。

また裏面は意図的に緯糸の木綿が起毛させており、使用者が暖かさ・柔らかさを求めて加工したものかもしれません。

 

民俗学者の故田中忠三郎氏の

「人はいかに貧しくとも、装わずにはいられない」という言葉がありますが

いかに貧しくともボロは着たくない、少しでも美しく、着心地の良いものを身に着けたい

そんな切実な想いが浮かび上がるような資料です