発売開始10日ほどにも関わらず多くの方に著作をご購入頂き、
非常に嬉しく思っております
今回の冊子は、自然布全体を俯瞰した時に何が見えるのかというものであり、
同時に宵衣堂にとっての自然布とは何か?という答えでもあります
大仰に思われるかもしれませんが、自然布という存在は
これからの時代を照らす一燈であると信じてやみません
自然布について知ることで、
ご自身の生き方を考える一つのきっかけとなりましたら幸いです
今回、まえがき部分を公開いたします、ぜひご一読頂けますと嬉しいです
- - - - - - - - - -
日本の自然布
土から生まれ、土へと還るもの
はじめに
人の基本的な生活を「衣食住」と表現しますが、それらを自然の中に求めて生活していたのは、そう昔のことではありません。当時の人々にとって食料や住居を調達する以上に、”衣服を如何にまかなうか”という事は、家族の生死に直結するものでした。衣服を着ることは人だけが行うものであり、人を人たらしめるものです。
そして自然布とは、植物を原料とした手仕事の布を示す言葉です。
シナやオヒョウ、楮などの樹皮。山野で採取される藤や葛、南国の芭蕉。畑で栽培される木綿、大麻や苧麻など、その土地の気候風土によって育まれた植物から人の手技によって自然布が作られ、身を守る衣服として使われてきました。
ただそれは自然と向き合う厳しいものでもあり、その反面、巡る季節の恵みを頂く、人々のくらしの中で育まれたものです。そこには現代人が想像もできないような先人の知恵があり、自然布とは、人と自然の関係性のもとにあって初めて存在しうるものです。
本書では自然布の全体像を俯瞰することで、自然とひと続きだった人のいとなみ、人にとっての衣服に焦点を当てたものとなっています。自然布という存在は現代を映す鏡として存在し、これからの時代を照らす光である、と信じてやみません。それらがこの日本に脈々と伝わっていること、その意味をいま一度考えていきたいと思います。
令和 2年 4月 26日
宵衣堂 小野 健太
コメントをお書きください