宵衣堂は、日本各地に伝世する自然布の収集・研究、展示や講演などを行っております。
その自然布とは、植物から人の手で作られてきた布であり、その土地に根ざした布が日本各地に存在します。
アイヌを代表するアットゥシや、南国の沖縄によって育まれた芭蕉布や宮古上布、
光を纏うような光沢を持つ葛布など、それらは産業として今でも作り続けてるのです。
そんな手仕事の布がこの経済大国の日本に残されたことは奇跡であり、
そこにはきっと意味があるのだと信じて疑いません。
それらを語り、その世界観を伝える活動をしております。
宵衣堂の「宵衣」は、恩師に送られた中国の故事(『唐書』劉蕡(りゅうふん)伝)
「宵衣旰食」(しょういかんしょく)に因んで名付けました。
それは、天子が民のため政務に励むさまを表し、夜明け前には起きて衣を着替え、
夜遅くなってから夕食をとる程に忙しく働く、様を表した言葉です。
貴方は努力の人でありなさい・自らの道を進みなさい、とのエールであり
衣服にも因んだ自らの屋号として定めました。
仏教用語に「身土不二」という言葉があります。
本来は仏教における因果を示す言葉ですが、明治期に自然食について用いられるようになりました。
そこでは「身体と土地は不可分であり、食べたもので体が作られる」という意味で使われておりますが、
そのことは食だけではなく、衣食住全てにおいても同じことが言えるのではないでしょうか。
自然から素材を頂き、人の手を持って布となす。
そんな「自然布」は土の延長としての布であり、人はそれを身にまとう事で自然と繋がっている。
同時にその布は、その土地の環境や地域性・文化的背景に深く根ざしたものであり、
人々の営みや自然との共生を示す象徴としての布でもあります。
自然布とは単に織物を示すだけではなく、そういった循環する一つの世界観を示すものであり、
自然と共に生きてきた日本人の思想であると言っても過言ではないでしょう。
宵衣堂はそんな声なき布の代弁者であり、自然布という世界観を語るものでありたい。
皆さんの皮膚感覚を呼び覚まし、今の生活を見直すきっかけとして欲しい。
そこにきっとこれからの時代を生きていく指針があると考えております。